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果たしてフォームローラーで本当に筋膜はリリースできるのか

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caution!

本記事は2018/8/22に投稿されたものをリライトしています。

「筋膜リリース」という言葉が一般化して数年。様々な場面でこの単語を見かけるようになりました。

身体のコリや循環を解消するに留まらず、中には「痩せる」「花粉症が改善する」などという情報もあります。そのうち筋膜リリースで宝クジも当たるようになる勢いです。

もはや何でもアリの筋膜リリースですが、今回は最もポピュラーな関連グッズ「フォームローラー」の効果について考えてみたいと思います。

概要

「筋膜」は近年のスポーツ研究の分野でもホットな話題の一つですが、研究に関してはまだ途上段階の分野です。

そのせいか、wikipediaでもこのように記載されています。

筋膜は全身の組織を包み込んでいるだけでなく、組織間の結合も担う結合組織である。

筋膜という単語一つでまとめるのは困難であり、解剖学的に詳細な名称付けが必要だが、専門家の間でも分類方法が定まっていないのが現状である。
wikipedia より引用

一方、リリースローラー大手の「トリガーポイント」公式サイトでは次のように定義されています。

筋膜とは筋肉を包む膜のことで、ウェットスーツのように体全体に張り巡らされ、表層から深層まで立体的に包み込むため、組織を支える第二の骨格であるといわれています。

筋膜は筋全体を覆っている最外層の筋外膜、いくつかの筋線維を束ねて覆っている筋周膜、さらに筋線維1本1本を包む筋内膜との3種類に分けられます。

トリガーポイント公式サイト より引用

大筋は同じですが、細部には解釈の違いがあるといったところでしょうか。

企業やスポーツ関係者が便宜上使う「筋膜」と、医学的・解剖学的な「筋膜」は多少違う意味合いで使われている可能性が高そうです。

スポーツにおける筋膜の働き 

スポーツにおける筋膜の働きについて検索すると「姿勢を保つ」「筋組織同士の摩擦から保護する」「筋繊維の動きをサポートする」といった「潤滑油」的な役割がヒットします。

これらが拘縮したり癒着してしまうことで、筋肉のコリや疼痛の原因になるそうです。

「筋膜リリース」とは、これらの拗れを解消し正しい状態に戻すことであると考えられます。

研究紹介

アメリカの研究「Foam Rolling as a Recovery Tool after an Intense Bout of Physical Activity」 では、リカバリー・ツールとしてのフォームローラーの有用性の検証を行っています。

20名の被験者をコントロール群、運動後にフォームローラーを20分使用する群(FR群)の10名ずつのグループに分け、運動(スクワット)を行い筋肉痛や可動域などを比較しました。

実験の結果、FR群では「筋肉痛」「可動域(の低下)」が軽減されたことが分かっています。

フォームローラーの有用性が示唆された一方、結論の部分では以下の記述があります。

From the present findings, it is speculated that FR pro- vides recovery benefits primarily through the treatment of connective tissue.Because the present evidence is indirect, further research should be conducted.

「有用だと思われるけれど、更なる調査が必要」といったニュアンスでしょうか。 なぜ有用と思われる結果が出たのか、その機序についてはまだ分かっていない部分が多いようです。

There was no direct funding for this research. D. G. Behm and D. C. Button participate with the Theraband Research Advisory Council. Theraband’s products include foam rollers.

一応「フォームローラーを作っている企業からスポンサードを受けて書いたわけじゃないよ」みたいな一文が最後に出てきます。この手のスポーツ関係の研究は恣意的なものもありますよね。

まとめ

フォームローラーの有用性が示唆されている一方、専門家からは「フォームローラーでは筋膜に影響を与えることはできないのではないか」という指摘もあります。 

どうにも「ローラーで刺激できるポイント」と「筋膜があるとされるポイント(深度)」にズレがあるようです。

上記を踏まえ、今回の流れをザックリまとめると以下のような感じになるでしょうか。

・筋膜には潤滑油のような働きがあると考えられる
・「筋膜リリース」は商業的・便宜上の言葉の可能性が高い
(厳密に「筋膜をリリースする効果」があるのかは疑わしい)
・フォームローラーには恐らくマッサージ効果があり、パフォーマンス改善の一助となる可能性がある 

研究としては分かっていないことが多いわけですが、スポーツの現場ではフォームローラーは本当によく見かけますし、体幹効果があるといった声も多く聞きます。

「ロジックはよくわかっていない」というのが正直なところですが、いち選手の立場としては「効果があるならいいじゃん」という感じです。

適切なリリース時間や押し当てる強さについても分かっていないことが多いようですが、一般的にはスポーツマッサージはウォーミングアップの一環で5分程度、練習・競技後のリカバリーで20〜30分程度とされているようです。

したがって、フォームローラーもこれに準じた時間実施するのが良いのではないでしょうか。 

けっこうウォーミングアップ前に長い時間ゴロゴロやっている人を見ますが、相当コリがない限りは5分〜10分で切り上げるのが吉かもしれませんね。

 

今日はここまで。