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完全に私見で100m10秒台に突入する方法を語る 後編

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どうも、森です。

前編、後編ともにかなりリライトしました。

といいますのも「100m 10秒台」と検索するとこのブログが上位表示され始めたんですよね。「検索したらクソサイトばっかじゃん!」と吐いた手前、少しでも良い情報が出せたら…と思う次第です。

【前編はコチラ】

wetland.hatenablog.com

走りの感覚の話

前編ではトレーニングやサイクルに対する考え方を書きましたので、後編はもう少し具体的な話を書きます。まずは感覚の話から。

出力ー脱力のスイッチ

 

走り込み云々については、最近の記事を見ていただきたいと思います。

ここでは「あんまり本数を重ねてもスピードは出ないよ」みたいな論調になりました。

ただし、持ち記録が11秒半ばくらいの選手の場合、単純な力も弱く主力-脱力のスイッチを掴めていないことが多いです。上記リンクで紹介した論文にもありましたが「速く走ろう」とすると、どうしてもピッチに依存した走りや動きになります。

当然、全力走では走りの修正が効きません。いわゆる「詰まった動き」になってしまう可能性があります。
出力ー脱力のタイミングを掴むためには、200mにも取り組むことをおすすめします。100mと200mのタイム差が大きいと効率が悪い走りであることが多いです。

www.mukai-kaze.com

200m走のタイムの目安など

22秒前半に入ったあたりから感覚もかなり変わってきますので、まずはこのラインを目指すべきです。(中には22秒9とかで10秒台の選手もいますが…)
100m10秒台に向けて調整を始める前の指標として、地力で100m11秒1、200m22秒4くらいを出せる状態になっているくらいが適当と考えます。本当は400mも51秒中盤くらいに入っているとなお良いです。

具体的な指標やトレーニングについて

ここまでトレーニングサイクルや感覚などの話を書きましたので、少し具体的な数字の話を書いていきます。

最大疾走速度が最重要

100m10秒台より先では、最大疾走速度が最重要です。多少終盤に失速したとしても、最大疾走速度が高ければゴールタイムが良いといわれています。

では、10秒台相当の最大疾走速度とはどのくらいなのでしょうか。10秒台後半〜11秒フラットあたりの走行データを見てみましょう。

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Aは土江 寛裕 先生の論文「最大スプリント走時の走速度, ピッチ・ ストライド, 接地・滞空時間の相互関係と, 競技力向上への一考察」の被験者の持ち記録、B及びCは2007年佐賀インターハイの男子100m決勝7位の酒井選手、8位の須藤選手のデータ、D及びEは2007年大阪世界選手権女子100m決勝1位のヴェロニカキャンベルブラウン選手、2位のローリンウィリアムズ選手のデータをそれぞれ引用しています。

佐賀インターハイの決勝で11"08の須藤選手は準決勝を10.67で通過していますし、ヴェロニカ選手も自己記録は10.76です。ここに出ている数値が全てとはいえませんが、最高速度10.4m/s前後あたりが10秒台突入の目安になるといえましょう。

私も10秒台を出したシーズンの冬に論文の被験者として最高速を計測した時は10.35m/sでした。

10.35m/sの領域とは…

例として、秒速10.35mを計算してみましょう。ピッチ4.5歩/秒で1歩あたり2.3mのストライドが必要になります。 もう少しピッチ寄りの4.8歩/秒としても2.16mのストライドが必要です。

2.1m〜2.3mの間隔のマーカーを40m〜50mもしくは50〜60m地点に置き、全力に近いスピードでこの区間を抜けるトレーニングが有効ではないでしょうか。

練習タイムの目安

最大疾走速度が重要とは言いましたが、現実的には計測にあたって準備を要します。

簡便な方法としては、30mや60mのタイムを最大疾走速度の目安にする方法があります。最大疾走速度は30m〜60mの範囲で計測されることが多いので、ある程度は信憑性があります。

上記選手の30mと60mの通過タイムはこのような感じになっています。

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サンプルは多くありませんが、30mで4秒0台〜4秒1、60mで7秒を切るか切らないかくらいが目安ではないでしょうか。

実際のトレーニングでの計測は手動のことも多いでしょうし、タイムトライアルと試合のコンディションは違います。 ですが、これだけ数値が近似値で収束しているので信憑性はそれなりにあると思います。

室内陸上は40mで実施する所もあるようですが、5秒0〜5秒1相当が出せればかなり可能性があります。 もちろん手動計測のところも多いでしょうし、室内大会は冬期での実施です。基準に満たなくてもシーズンに入れば調子が上がることもあり得ます。

コントロールテストの目安

各種コントロールテストが存在しますが、最も簡便でそれなりに信憑性の高い種目といえば立ち五段跳びでしょう。

個人的な感覚としては、最低14mくらいは欲しいなとは思います。これに関しては13m台でも10秒台の選手はいます。立ち五段跳びの記録とタイムの相関を出した研究も探せば出てきますので、適宜参考にしながら実施してみてください。

パワーマックスの目安

パワーマックスについては個別記事を書いています。

やはり、体重が軽い選手も無酸素パワーテストの1000w越え、4kp200回転は目指してもらいたいです。

後編まとめ

長くなりましたが、ざっくり後編をまとめると下記のとおりです。

・最高速区間のマーク走の間隔は2.1m〜2.3mが良さそう

・30mで4秒0台〜4秒1、60mで7秒を切るか切らないかくらいが目安

・コントロールテストも有効な指標である

目的と手段が入れ替わらないように注意しましょう。立ち五段跳びの試技慣れ、パワーマックスの漕ぎ慣れで記録が向上しただけでは100m走の記録に直結しません。

立ち五段跳びやパワーマックスの記録ひとつをとって慢心したり悲観したりというのはナンセンスです。 指標にする数値は複数の種目を採用しましょう。

 

今回はここまで。